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おいしいごはんが食べられますように

読書

こんにちは、いろはです。
今回は芥川賞を受賞された高瀬隼子さん著書『おいしいごはんが食べられますように』をご紹介します。
ほっこりするグルメ小説かと思っていましたが…。
なかなか衝撃的な小説でした!

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芥川賞とは?

前回のブログで直木賞受賞作を紹介した際に、直木賞とはどういう賞なのかと詳細を記載しました。
そこで、今回も芥川賞について調べてみました。
直木賞とはどういう賞なのか知りたい人は、前回のブログで紹介しているので参考にしてみてください。

芥川賞も直木賞と同じ、公益財団法人日本文学振興会が選考・受賞を決めている賞のひとつです。
日本文学振興会のホームページによると、芥川賞とは以下のように記載されています。

芥川龍之介賞

文藝春秋の創業者・菊池寛(明治21年~昭和23年)が、友人である芥川龍之介(明治25年~昭和2年)の名を記念し、直木賞と同時に昭和10年に制定しました。雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品のなかから、最も優秀な作品に贈られる賞です(公募方式ではありません)。正賞は懐中時計、副賞は100万円。授賞は年2回で、上半期(前年12月から5月までに発表されたもの)の選考会は7月中旬に行われ、受賞作は「文藝春秋」9月号に全文が掲載されます。下半期(6月から11月までに発表されたもの)の選考会は翌年1月中旬に行われ、「文藝春秋」3月号に全文が掲載されます。(後略)

公益財団法人日本文学振興会 https://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/

同時に設立された直木賞との違いは、審査対象となる作品のカテゴリーの違いです。

直木賞は、新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)のなかから受賞作品が選ばれます。
一方で芥川賞は、新進作家による純文学の中・短編作品のなかから受賞作品が選ばれます。

また芥川賞は、雑誌(同人雑誌を含む)に掲載されている作品が対象となりますが、直木賞は、書籍として出版されている作品が対象となります。

混同してしまいがちな二つの賞ですが、きちんとした審査対象カテゴリーの線引きがあるようです。
芥川賞は純文学を対象としているので、読めるか不安という人は、エンターテイメント作品を対象としている直木賞受賞作から読んでみるのがいいかもしれません。
読書に慣れている人は、新しい作品との出会いを求めて、芥川賞受賞作をぜひ読破してみてください。

芥川賞

正式名称は、芥川龍之介賞。
文藝春秋の創業者・菊池寛が、友人の芥川龍之介の名を記念し、制定。
新進作家による純文学の中・短編作品のなかから、最も優秀な作品に贈られる賞のひとつ。
公募方式ではなく、雑誌(同人雑誌を含む)に掲載されている作品が対象。
年に2回、選考・受賞が行われる。

『おいしいごはんが食べられますように』は、タイトルと内容にギャップがある賛否両論ある作品

グラフの見方については、こちらの記事を参照にしてください。

文章自体は難しい表現などもなく、一気に読破できます。
ただ、二人の人物の視点から話が進んでいくので、「この場面は誰目線からの話なんだろう?」と急に視点が変わり、混同してしまう場面があります。
こういう設定で話が進んでいくんだと理解してからは読みやすいですが、慣れるまでは戸惑うかもしれません。

話の展開、視点としては、よくある職場の話。
こういう人いるよね~と思いながら読む点では王道なストーリー。
ですが、タイトルからごはんが出てくるほっこり小説と勘違いする人がいそうですが、そうではなく。
食べることがとても苦と思いながら生きる主人公の視点がちょっと新しい。
食べること=人を幸せにすることとして描かれていない本作は、衝撃的な作品でした。

以上の点からグラフの位置づけは上記のように位置づけました。
食べ物を通したほっこり小説を期待する人にはおすすめできませんが、リアリティある職場小説を読みたい人やちょっと刺激的な作品を求めている人におすすめです。

こんな人におすすめ!

  • リアリティある職場小説を読みたい人
  • ちょっと刺激的な作品を求めている人

こんな人は読まない方がいいかも…

  • 食べ物を通した温かみのあるほっこりとした小説を期待する人

『おいしいごはんが食べられますように』の魅力と感想

おいしい食べ物を食べることが苦と感じている二谷と仕事ができて頑張り屋な押尾の二人の視点から話は進みます。職場には周りからちやほやされみんなが守りたくなる存在の芦川さんがいて、彼女を中心とした職場での不穏な人間関係を食べものを通して描いた作品。

ここからは、本書の魅力と感想を述べていきます。

タイトルと内容のギャップがすごい!

本のタイトルが『おいしいごはんが食べられますように』となっていて、大体の人は「おいしいごはんを通して人間のあたたかい心を描いたほっこり小説なんだろうな」と想像しそうですが…。

その想像は裏切られます!

主人公の二谷は、おいしい食べ物を食べることを苦としていて、でも食べないと生きていけないからカップラーメンを食べますが、食べなくても生きていけるなら食べないことを選択する人。
作中、芦川さんが作ってきたお菓子も食べることが嫌で握りつぶすなど不快な場面もあり、そこまでしなくてもいいのではと思ってしまいますが。

私自身は、二谷とは真逆でおいしいごはんを食べることを喜びとしているので、二谷目線からみた食べものってこういう世界なんだと新鮮さも感じました。

芦川さんが手作りケーキを職場に持ってきて、その場でどうしても食べないといけない場面での二谷流の食べるときのマナーの解説がとても詳しい。

手作りのお菓子を食べる時のマナー。大きな声を出しながら食べること。感動の演技を見せつけること。食べ始めの一口で「おいしい」とまず言い、半分ほど食べたところで「えーこのソースってどうやって作ってるんですか」と興味のないことを聞き、すべて食べ終えたら「あーっおいしかった!ごちそうさま」と殊更に満足げに聞こえるよう宣言しなければいけない。

高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』 94ページより

食に興味がある人は、こういうことを考えなくても自然にやっているんだと思いますが、二谷は食に興味がないのでこういうマナーを自発的にやらないといけないので、そういう人にとっては疲れる作業なんだなと感じてしまいました。

ごはんを食べること=喜びという方程式ができている世の中で、でも現実世界では二谷のようなタイプの人は絶対いるわけで、そういう人にとっては生きづらい世の中だし、無理やりおいしいと言わなければならないこともより食べることを苦にさせているのかもしれないですね。

ノンフィクションなのでは?と思ってしまうくらいリアルな職場事情に共感!

作中では、不調を感じると無理せず早退や欠席をする芦川さんに対して仕事頑張り屋な押尾さんは不満を抱いています。
なにより、そんな芦川さんに対してみんなが当たり前のように優しくし、配慮しているのが不満です。
自分だってしんどい時があるのに、我慢し、芦川さんの仕事までしないといけないという状況。

「職場で、同じ給料もらってて、なのに、あの人は配慮されるのにこっちは配慮されないっていうかむしろその人の分までがんばれ、みたいなの、ちょっといらっとするよな。わかる」

高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』 14ページより

押尾さんの芦川さんに対しての愚痴を飲み屋で聞いていた二谷の一言。
私は共感です。

実際に働いていた時、私も押尾さんと同じ立場のことがあったので押尾さんの気持ちがすごくわかる。
不調があるという理由は頭では理解しているけど、彼女の分まで仕事を補わないといけないといういらだち、みんなに配慮されているという羨ましさ。
しかも同じ給料で。もしかしたら相手の方が高い給料をもらっているかもしれない状況で。

いっそのことアメリカのような出来高制になれば、こんな風に思わないかもしれないけど。
現在の日本は終身雇用制なのでそれはできないし。
上司は上司であきらかにえこひいきをして、甘やかしたりと都合の悪い日本社会の側面が見えたりする。

あまりにもこの不条理さがリアルに描かれているので、著者は押尾さんの立場を経験した人なのではと思ったり。
芦川さんサイドの視点がないので、もしそうだとしたら押尾さん側の人だったのかもしれない。

でも芦川さんのような人は会社にいては駄目かと言われればそうではなくて。
そうやって自分の仕事を誰かが補ってくれているということをきちんと自覚して、他の部分でカバーするとか。
そういう気遣いがあればもう少し押尾さんのいらだちも減ったのかなと。

作中の芦川さんは、配慮してもらってるからと手作りのお菓子を職場に持ってきますが。
そんな余力があるなら仕事しろよと思われてもおかしくないし。
体調がいい日に少し早く出勤して休んだ分を取り返すとか、仕事中他の人の仕事も手伝うとか、もっと違う方向に目が向けば良かったのかもしれない。

世の中、いろいろな理由でフルタイム働くのが難しい人がいるけど。
自分は正当な理由があるのに、芦川さんみたいな人がいるから配慮してもらいにくくなると嘆くのではなく。
そうやって自分ができない部分を頑張って補ってくれている人がいるということを自覚して仕事をするのが大事ということを著者は伝えたいのかなと思いました。

おわりに

最初読みおわったときの感想は、「なにこれ?」でした。
それくらい思っていたものと違っていました。
でも何回か読み返してるうちに、なんだか考えさせられることも多くて。
賛否両論ある作品かもしれませんが、私は共感できる部分が多く、ありだなと思う作品でした。

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